日本の怖い話のいいところは、モンスターに襲われる、腕が切られるといった「直線的な表現」よりも”何かがいるかもしれない”と不安感をあおる「婉曲的な表現」で怖がらせることだと言われています。
そんな日本のホラー感を味わえるフリーゲームが「りりはうす」様の制作された「物念世界」です。
一昔前の日本を舞台とした「和」の世界観を楽しめるホラーアドベンチャーゲームで、主人公である関西弁の少女「凛」が異世界を探索して脱出を目指すのが目的となります。
なお、1週のプレイ時間は約2~3時間、デフォルトグラフィックとアレンジグラフィック(表情変化少なめ)を選べるので、気に入った方の絵柄を選んでプレイしてみましょう。
ちなみに、エンディング後のタイトル画面で「???」(追加要素)が表示されたら真エンド(ベストエンド)と思ってよいそうなので、これを目標として楽しむのも遊び方の一つとなります。
不気味さと和の美しさが混在する「物念世界」
凛が探索していく3つの世界は、どれも元になったモノをテーマにした世界観で作られています。
どの世界も、日常に感じるわび・さびや造形美、自然の美しい色どりといった日本人の持つ美意識を感じさせるものが取り入れられていると思いました。
ただ、最初の世界では美しさよりもJホラーによくある”いつもと違う”不気味さの方を強く感じるかもしれません。
なので、次の面から「和」の雰囲気を感じやすくなり、最後のステージで本格的に日本の風景の美しさを味わえると思います。
これはステージ進行に合わせてタイトル画面が変化していく要素にも表れているため、様々な面から美しいビジュアルを楽しめるのがこのゲームの魅力です。
また、見た目の不気味さに反して、ホラーゲームが苦手な人でもやりやすい作品とも言えるでしょう。
ホラーといっても序盤から中盤にかけて即落ちする選択肢が多く、対応を誤らなければ大丈夫な場面も結構あります。
さらに、即落ち要素が複数あるので早くリトライできるようにどこでもセーブ出来ることや、重要な探索ポイントに矢印が表示されるアシストモードを設けていたりと救済措置もあるので、謎解きが苦手な方は是非ご利用ください。
ちなみに、個人的にはこの子が主人公でよかったと思っています。
子供である「凛」が持っている純粋さと素直さは、不気味な世界において清涼剤となってくれることが多く、ホラーゲームでありながら怖さを忘れさせてくれることもありました。
また、誰かを助けようと頑張る彼女の姿はホラーが苦手な私でも頼もしく感じる程で、ビビりながらもストーリーをクリアできたのは主人公に助けられた部分が大きいと思います。
作品全体を通してホラー要素が入っているわけではないので、怖さを求める方には刺激が足りない部分もあるかも知れません。
しかし、プレイヤーを飽きさせない要素がとても多いので、謎解きなどを楽しんでプレイできるゲームだとおもいますね。
日本ならではの「八百万の神々」という考え方
「八百万(やおよろず)」という言葉を聞いたことがありますか?
「無数の」、「非常に多くの」といった数の多さを大雑把に表す言葉であり、使い方として「八百万の神」が有名です。
日本には山や滝、巨木など自然物、または台風や地震などの自然現象には神が宿るという自然崇拝の考え方が根強く残っているので、「霊峰」として富士山を信仰の対象とするような自然を崇め奉る文化がそのまま残っている例が多くあります。
また、その自然物から生まれた物品や生命にも神が宿るということらしく、この世のにある全てのものに神が宿るとして「八百万の神」という言葉に繋がるようです。
つまり何が言いたいのかというと、「あらゆるものに心や魂があるかも知れない」ということになりますね。
まあ、この言葉自体はゲームに関係ありませんが、ストーリーを楽しみたいには関係のある考え方と言えるでしょう。
この話から気づく方もいるかもしれませんが、それぞれの世界の住人は「世界を形作るモノ」の思いを語ってくれます。
それは過去に受けた悲しみや恨みを晴らしたい、友達として一緒にいたい等、様々な理由から主人公を自分たちの世界へと引き込み、自らの願いをかなえようとしていることです。
そういった勝手な理由から異世界に引きずり込まれるのですが、それぞれの世界の住人は時折見せる怖さと共に感謝や信頼などの感情も見せてくるため、恐ろしい存在でありながら物悲しさを感じてしまう憎めない悪役のように思うこともありました。
そう考えると、私たちが何気なくやってしまうことは誰か、または何かを傷つけてしまうことであり、恨みまれても仕方ないことかもしれません。
それこそ、物言わぬ存在だからといって大事にしないと、思わぬしっぺ返しを食らうかもしれないのでご注意ください。
大事にしなかった結果はゲーム中でイヤというほど味わえるので、何度もバッドエンドになりながら真エンドを目指してみてください。